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キロクのブログ

変わりゆく風景やものを単なる私的思い入れで記録中。意外とのんびりしてられない。

[映画]ピエロの赤い鼻(2004年・フランス)

横浜の小さな映画館で、随分に前に父と観た映画。
父が戦争を知る世代だから、「映画を観に行こう!」とか「何かDVD借りよう」というと、大抵こんな感じのものに・・・。父なりに戦争について、何か伝え、考えてほしいという思いがあったのだと思う。一方で、父にとっても、あの頃世界で何が起こっていたのかを知ることや、何十年もの間どうやっても忘れることのできなかった悲しみや辛さを追体験をすることは、必要だったのだと思う。

戦争を語り伝える側(親)の視点で描いた映画はたくさんあるが、それを聞く側(子)の視点で描いたり、戸惑いに僅かでもフォーカスした映画は少ない。意識していないけれども、きっと子供は子供で親を通して戦争とその中の生き抜いて来た親の姿を見ている。

「ピエロの赤い鼻」
監督:ジャンベッケル、原作:ミッシェル・カン

 

ネタバレしますのでご注意を(笑)。

 戦時中を舞台にした映画の中では、かなり心温まる話。戦争を美談にするつもりはないけど、人と人とのことだから、敵・味方を超えてこうした交流が起こることは十分あり得るんじゃないかなあ、というお話。

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【あらすじ】
1960年代のフランスの田舎町。
多感な年頃である14歳のリシュアンは、自分の父・ジャックが休日のたびに「ゾゾ」という名のピエロになり、皆の笑い者になってることにうんざりしていた。ある日、父の長年の友人が、どうしてジャックがピエロになったのかを語り始める。

第2次世界大戦の末期、ドイツ軍にフランスが占領された頃のこと。
ジャックは、ちょっと格好つけてみようという程度の軽い気持ちから小さなレジスタンスを行い、負傷者を出してしまう。ドイツ軍に捕まりジャックは、友人達と4人で大きな穴の中に放り込まれる。
脱出を試みるものの、深い穴からは出られないまま、雨は降り、お腹も減るし、苛立ちや絶望感も出てくる。

そんなとき、ひとりの若いドイツ兵が穴の上から4人を見下ろすように姿を現わし、滑稽なパントマイムを披露する。からかわれていると憤慨する4人。若いドイツ兵は上官達の目を盗んでは、懲りずに現れては芸を披露し、時にはピエロの赤い鼻をつけ、穴の中に食べ物を放り込んだり、話しかけたりする。次第に4人の心にも純粋な笑いが巻き起こる。
そして、彼は語りかける。

「生きている限り希望がある」

ところがこの若きドイツ兵は、人間としての良心から上官な残酷な命令に従うことができず、ジャック達の目の前で射殺されてしまう。穴には彼がつけていたピエロの赤い鼻が転がり落ちる。

ドイツ兵はかつてフランスで芸を学び「ゾゾ」という名前で活動していた。軽率な行動から負傷者を出してしまったこと、そのドイツ兵との出会い、そうした経験や思いから父親がピエロになったことを知ったリシュアンは、父親を誇りに思うようになっていく。

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戦争映画って、敵兵は冷たい表情とかぶっきらぼうな態度で描かれることが多いけれど、この映画では敵であるはずのこのドイツ兵のことを、一人の人間であり温かみのある人として描いているのが印象的。